金縛りと恐怖体験

僕は小さい頃よく金縛りになっていた事がある。金縛りは主にレム睡眠時の覚醒(目が覚めちゃう)による睡眠麻痺が原因らしい。レム睡眠とは身体は休んでいるのに脳は起きている状態のこと。脳は起きて身体が寝てる…なんとも奇妙な感じである。

だとすると幼少の頃に体験した数々の金縛りは睡眠麻痺で説明がつきそうだ。オカルトや心霊現象番組などを怖いと思いながらもついつい(布団に包まりながら)見てしまっていた軽度のオカルト少年だった僕は金縛りを楽しんでいた傾向にあった。当時は睡眠麻痺だなんて言葉すら知らなかったし。

金縛り(睡眠麻痺)を体験した人には分かるかもしれないが、慣れると「あぁ、金縛りきそうだな」というのが分かってくる。僕の場合はパッと目が覚めて足先の方からジリジリというかピリピリというか痺れてくるような感じがする。その際、腕や体は動くんだけど、その麻痺が上がってくると体・腕のような順番で麻痺して動かなくなる。昼夜問わずなるときはなった。目だけは動いた(開いた)ので眼球が動く範囲で周りを見渡すことくらいはできるけど、結局何もできないのでそのまま眠る、みたいな感じだった。

しかし二度だけ怖かった金縛り体験がある。これも睡眠麻痺時と幻覚(夢を見ている状態で目を覚まし、現実とごっちゃになるらしい)で片づけられてしまいそうだが、当時はかなり震えたのを覚えている。

① お腹に乗るなにか

この金縛り体験は10歳くらいだったと思う。少し暑いくらいの季節で時間帯は昼前頃だったと記憶している。いつものように足元から金縛りが始まる感覚があり「あー、来るなコレ…」と思ってるとやはり金縛りが始まった。するとすぐいつもの金縛りとは違う事に気づいた、目が開かないのだ。今まで体は動かなくても目が開かない事はなかったので少し動揺していると、次はお腹のヘソあたりにズシリと重さを感じた。何かが乗っている、確実に何かが乗っているという感覚がある。ヘソからお腹を圧迫して呼吸が少し苦しくなるような何かが。だけど目が開かないので確認のしようがない。だんだんと怖くなってきて、「眠ってしまえ!」と言い聞かせたが余計に眠れなくなるばかりでパニックになってきた。目は開かない、力が入ってるかどうかも感覚が全然分からない。声も出せない。お腹が重い。だけどパニックになって目を開けたり声を出したりしようとして疲れたのだろうか、いつの間にか眠っていた。

という体験をした。これも睡眠麻痺+半端な覚醒による幻覚になるのかな?当時は泣きそうだったが。

② 居間にいる誰か

この金縛り体験も10歳くらいで時間帯は夜中、季節は少し過ごしやすくなった秋頃だと記憶している。当時は自分の部屋などなく母親と同じ部屋で並んで布団を敷いて寝ていた。部屋の間取りは2DKで扉の類いは取っ払っていて全ての部屋が繋がっている個人のプライバシーとは無縁の空間だった。

これは金縛り体験というより不思議な体験として思い出に残っている。

ふと目が覚める。布団からカーテン越しに外を見るがまだ真っ暗。どうやら変な時間に目が覚めたらしい。目をつむり再び眠ろうとしたけど妙に目が冴えてしまった。体は動く。布団の中で横向きになったりうつ伏せになったりしてなんとか眠るようにしているが目が冴えて全然眠れない。そして再び仰向けの状態に戻ったときに違和感を感じた…

当時の家は仰向けの状態に寝ていると左側にキッチンが見える間取りなんだけど、さっきまでうつ伏せ寝になったり布団の中で体勢を変えるために動けていたのに左側、つまりキッチンの方を向けなくなっていた。ピタッと止まってしまうのだ。それ以上左を向こうとしてもびくともしない。金縛りか?と疑うが、金縛りの前兆もなかった、睡眠麻痺的な痺れもない。右向きに体を動かすことはできたが左向きに体を動かそうとするとやはり仰向け姿勢のところまでしか動かせず、声は出せなかった。…するとキッチンに誰か人がいる気配を感じた…

仰向けで寝ている人は多いと思うので伝わる思うが、仰向けの姿勢でも左右を見ることはできる。眼球を動かすことができれば完璧ではないがある程度は見える。

人の気配を感じなんとか眼球の動く範囲で視野を探り可能な限り視線を左側に向けてみるとキッチンの部屋にあるテーブル(緑が机で黄色が椅子)に人が座っているのがギリギリ見えた。それまでは「これは金縛りか?でも前兆っぽいのもなかったし、何よりさっきまでゴソゴソ動けてたしなー」とノンビリしてたが、キッチンのテーブルに座る人を見てギョッとした。キッチンのテーブル(の椅子)に人が座ってる??仰向け寝の状態からの視線なので完璧ではないが座ってるように見える。座れるスペースなんてないのに?とギョッとした。

簡単に説明すると、キッチンとキッチンにあるテーブルには物が溢れておりキッチンテーブルはテーブルの役割を果たさずただの物置きと化していたし、さらにテーブルには椅子が一つしかなく、椅子はテーブルに永遠に格納された状態でなおかつ椅子のすぐ後ろには食器棚(青)があり、それでいてそこは椅子が格納された状態でギリギリ通れる隙間の唯一の通路になっているので[椅子を引く]なんてことはできない、仮に椅子を引いたとしても椅子は三分の一も引けば食器棚に当たる状態だったからだ。椅子を引いたとしても人が座れるような隙間さえ作ることが出来ない環境だったのだ。

当時のゾッとした感情を恐怖だとするなら今は振り返ると奇妙という感覚になる。椅子を引けるはずがないのにテーブルにはちゃんと座っているように見えたからだ。全身真っ黒、影のような黒、帽子をかぶっていてうつむいている。妙な表現だが夜中なのに少しの明かりもないのに帽子をかぶってうつむく黒い人影だけはハッキリ(見える範囲で、だけど)と見てとれた。男性なのか?女性なのか?若いのか?年配なのか?それは分からなかった。当時なにが怖かったのか、それは金縛りの前兆が全くなかったこと、意識はあったし体も動かせた、痺れもないし起きてもいる。見えてからも動ける、しかし声は出せない。気づいた後でも右を向いたりしたが動かせた。でも左にはあおむけ寝のそれ以上は動かせない。最初は怖かったが何度も右向いて左向いて(できず)を繰り返していたらいつの間にか眠っていた。

という体験をした。当時は黒い影は亡くなった祖父なのかな?とか思ってたりもした。奇妙だと思えるのは座れない椅子に座っている人影だったり、左向き以外自由に動かせた体や金縛りの感覚はまったくなかったこと。

まさか、最初の[夜中に目覚めた]ってとこからすでに夢で夢オチじゃあねーだろーな?とか思ってしまう奇妙(当時は恐怖)な体験でした。チャンチャン♪

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